ここ数年で売り上げが急激に伸び,一時は在庫すら満足に見つけられなくなってしまった知育玩具がありますが,それはずばりcuboro社の積み木おもちゃです。
商品名は同じく「キュボロ(またはクボロ)」と言いますが,その歴史が1970~1980年代にまで遡るにもかかわらず,最近爆発的に売れるようになった背景には,将棋界で目まぐるしい活躍を示し続けている藤井聡太さんが幼少期に遊んでいたという事実があります。
今回は,そんなキュボロについて,藤井聡太さんとの関係から本玩具のシリーズ展開まで,幅広くみていくことにしましょう!
藤井聡太さんとキュボロの関係
藤井聡太さんは愛知県瀬戸市の出身で,2002年7月19日に生を受けました。
21世紀生まれで初のプロ棋士です。
そんな彼は2016年に62歳年上の加藤一二三当時九段と対局し,デビュー戦を見事勝利で飾って一躍話題になりました。
しかし,それ以降も驚きの連続で,2017年6月26日には「公式戦負けなしの29連勝」という大記録を打ち立てます。
さらに彼の歩みはその後も留まることを知らず,七段への最速昇進であったり,8割という高い勝率の連続記録,そして最年少でのタイトル挑戦記録を31年ぶりに更新し,そのまま棋聖,二冠となり,2021年に四冠,そして2023年11月10には八冠を達成して前人未到のトップ棋士に成長しました。
私自身,将棋はちょっと嗜んだことがある程度ですが,それでも彼の将棋は観ていて楽しくなります。
華があるというのでしょうか。
ほぼ毎回,対局の中にドラマ的な展開が待ち受けていますし,期待せずにはいられない魅力が藤井聡太さんの将棋にあることは素人目にも明らかです。
加えて,普段の佇まいは大変落ち着いていて,自分も見習わなければと思わされますし,相手のことをよく考えて発言しているところに思いやりの気持ちを見て取ることもできます。
そんな魅力ある人物なだけに,デビュー当時から世間の熱視線を集めることになったのは至極当然で,彼の強さのルーツに迫る番組などがいくつも放送されるようになり,NHKのクローズアップ現代などで冒頭のキュボロを取り上げるようになったのもちょうどその頃でした。
番組の中で1枚の写真が紹介されたわけですが,以下は彼が実際に作ったキュボロの塔です↓
写真右下にある撮影日が2006年の2月になっていますから,この時の藤井聡太さんはわずか3歳と7ヶ月だったことがわかります。
キュボロの取扱説明書によると「立派な塔を作れるようになるのは6歳になってから」と書かれているわけで,cuboro社の歴史においても彼は最年少記録を,人知れず打ち立てていたのかもしれません。
これほどの大作を日常的に作って見せられた母親の裕子さんは,
この子は賢いかもって,親バカながら思ってしまいました
などとかなり謙遜気味に振り返っているご様子でしたが,このようなきっかけを子どもに与えて立派に育ててきたわけですから,お母様は「この親にしてこの子あり」と誰しもが認めるであろう大したお方です。
なお,今回紹介するキュボロですが,発売自体は1980年代後半からで,Amazonでは2008年の9月から取り扱われており,別段,真新しいおもちゃではありません。
日本では2005年の愛・地球博にcuboro社が出展しており,これを機にキュボロが世界に広く知られることになったわけですが,藤井聡太さんは愛知県出身ということで,藤井家もまたこの博覧会をきっかけに本玩具を知るようになったと考えるのが自然でしょう。
いずれにせよ,幼少期に藤井聡太さんがキュボロに熱中していたという事実は,
この不思議な知育玩具が,子どもの発想力を育てるのに一役買っているのではないか
と,教育に悩む現代の親たちに希望の光を灯してくれました。
実際,TVで特番が組まれるようになった2016年の12月から,日本でのキュボロ人気が爆上がりし,テレビで藤井聡太さんの特集が組まれると決まってキュボロが売れるという状況が生まれます。
これを世間は「藤井フィーバー」または「藤井現象」と呼ぶようになり,その旋風は日本からはるか遠くに本社を構えるcuboro社にも再度大きな変化をもたらしました。
これまでに類を見ない急激な需要増に備えるため,同社は2018年からはスターターセットを筆頭に新しい機械を導入して増産に取り組むようになった結果,当時に比べて,今の方がずっとキュボロを手に入れられやすくなっています。
なお,藤井家に導入されたものは,複数あるセットのうち「スタンダード」と呼ばれているもので,最終的にはそれを2セット分用意して,組み合わせて使わせるようになったと聞きますから,さすがのお母さんもやることが普通ではありません。
次章からは,キュボロについてのより詳しいまとめと,実際に売られている全シリーズについて簡単に紹介していくことにします。
キュボロの魅力
キュボロは「立体的な迷路」などと形容されますが,具体的にはどのようにして遊ぶのでしょうか。
先ほど紹介した,藤井聡太さんが3歳のときの作品を再現したのが上の写真になりますが,このときのルールは実にシンプルで,
- コースを作ってビー玉を転がす
ただそれだけです。
もう少し詳しく言えば,「溝や穴の開いたブロックを自由に積み重ねてはビー玉が通る道を作り,できた塔にビー玉を転がしてみて,スタートからゴールまで玉が止まらないで進めば完成」となります。
例えば,上の再現例は写真をお手本にして作るだけなので簡単かと思いきや,いざ挑戦してみると,キューブの内部を走るビー玉の通り道を想像し,どこから出てくるのかまで計算しなければなりませんでした。
真似するだけならまだしも,これを1から作る場合は,完成形をイメージして,それに至るまでの構想を練り,試行錯誤を重ねながら作っていく必要があるわけで,子どもが創造力を育むにはもってこいの知育玩具だと考えることができます。
コースを作るだけならば,それこそ日本が誇る「プラレール」などの定番おもちゃでも代用できるでしょう。
そちらは「線路を上手くつなぎ合わせて,その上を電車が止まらずに走れば完成」となるわけですから,ルール的には似ています。
ですが,このキュボロではさらに立体感覚を備えていないと,まず完成させることはできません。
2Dと3Dの間には大きな隔たりがあります。
電車で例えるならば,トンネルの中の道を設計するようなもので,数学で例えれば,平面図形と空間図形くらいの差です。
それまでxy軸だけで済んでいたものにz軸が加わったときの難しさは,文系の方でも想像するに容易いでしょう。
実際,キュボロでは,穴の開いている位置がブロックごとに異なっています。
そのため,内部の見えない道に加え,手持ちの残りブロックについても気を配らなければならず,ビー玉が転がる先,それこそ将棋で言う一手先,数手先まで読んでいかなければなりません。
将棋では最後に一つの遊び駒も残さず,ぴったり積ませることでお見事と称されるわけですが,キュボロのブロック(キューブ)をできるだけ残さず使い切って完成させるという点もこれに通じるもののように感じています。
実際,キュボロの世界的なコンテストで受賞する作品はセットのキューブをぴったり使い切るものも少なくありません。
このときに生じる構想力,そして完成した時の達成感は,キュボロにしか出せない魅力と言えるでしょう。
ちなみに,先に紹介した藤井聡太さんの作品例だと玉はこのように動きます↓
藤井聡太さんが3歳のときのキュボロの作品がこれです。深い。。 pic.twitter.com/Sog2kXoL7G
— さんくす (@thanks_redo) June 5, 2020
ちなみにこうしたおもちゃはドイツでよく見られ,「クーゲルバーン」という名称で通っているそうです(キュボロはスイス製です)。
次章では,キュボロのシリーズ展開についてまとめていきましょう!
キュボロのシリーズ展開について
これまで「キュボロ」と一口に語ってきましたが,実際は大きく3つに分類することができます↓
- スターターセット
- エキストラセット
- その他
このうち,絶対必要とされるのが1のセットで,先に紹介した「スタンダード」という名を冠する基本セットなどが含まれています↓
2番目に挙げたエキストラセットは,スターターセットをより魅力的なコースに変えるための追加パーツで,これだけで遊ぶことができないとまでは言いませんが,あくまでサブ的な立ち位置です。
その他に,キュボロのパーツを取り入れた三次元の頭脳ゲームや書籍が出ています。
以下で,もう少し説明を加えていきましょう!
STANDARD50
現在,キュボロのスターターセットには「STANDARD」と「JUNIOR」の2種類が存在しますが,これらで始めてみて,まだブロックが足りないと感じたときに初めて,後述するエキストラセットに手を出すのが正解です。
前者は,含まれるキューブの数によって,16・32・50の3種類にさらに分けることができます。
基本的にはSTANDARD50を購入するのがおすすめで,キュボロの醍醐味を存分に味わうことができるものです。
私もこちらのセットの前モデルを所持しており,詳しいレビューは以下の記事を参照してください↓
STANDARD32
スターターセットから複数購入するか,エキストラセットをいずれ購入する予定がある方であれば「STANDARD32」もおすすめです。
ブロックの数は50のときより18個ほど減ってしまいますが,パーツの種類的には変わらず13種類のままとなります。
実際,STANDARD32のパーツ構成についてみてみると,塔の高さを高くするためだけのプレーンなブロック(穴や溝がないもの)が少なくなっている以外は,スタンダード50とほぼ同じ構成です。
なお,基本セットにはさらにパーツ数を厳選した「STANDARD16」や,1つ1つのキューブのサイズを2倍にした「XL」もありますが,他と比べるとやや使い勝手が劣るように感じました。
JUNIOR
対象年齢が例外的に3歳と書かれているジュニアですが,パーツ数は22種類もあり,全部で40個のパーツ(あえてキューブとは言いません)が入っています。
キューブの大きさは通常のキュボロと同じ5cmなので互換性がありますが,積み木の要素があったり,厚みが2.5cmのパーツもあるので,キュボロとはまた別のアイディアでもって遊んでみてください。
他にも,長いトンネルに加えて三角形のものや丸みを帯びたパーツなど,スタンダードには含まれていないものが多く,厳密に計算して塔を作らずとも,ゆるめの組み合わせでもってビー玉の動きを楽しむことが可能です。
エキストラセット
キュボロのエキストラセットは10種類が確認でき,入っているパーツが以下のように異なります↓
追加セットのラインナップ
SPEED:加速ができるパーツ(11種16個)
TUNNEL:内部を転がるトンネルのパーツ(11種16個)
SUB:裏面に溝が彫られ立体交差が可能(9種12個)
KICK:振り子の力で玉が坂道を駆け上る仕組みあり(7種8個)
TRICK:方向や道を変化させるパーツ(13種16個)
MAGNET:磁石付きのレールと橋の作れるブロック(9種12個)
JUMP:ゴムでできたトランポリンの仕掛け(8種12個)
PRO:より複雑なコースを可能にするパーツ(13種16個)
DUO:玉を2つ一緒に走らせられるパーツ(12種16個)
CUBE:プレーンなブロックのみ(1種16個)
ブロックの種類として,5cmのもの以外に2.5cmのものが入っていることにも注意してください。
また,それぞれにビー玉が3~5個付属します。
こうしてみてみると,追加用と呼ぶにふさわしく,使用する場面を選ぶ個性的なパーツばかりです。
その他
キュボロを使った対戦ゲームとして「トリッキーウェイ」というものが昔から知られており,できるだけ長いコースを作っては,ビー玉が通過したパーツの数で相手との得点を競います(プレイ人数は2~4人)。
5~6歳が大人相手に対戦するときなどにブロックの上部だけを使うこともありますが,内部のトンネルも使用するのが基本です。
変わった使い方として,これをキュボロの入門セットとして使う方もいました。
その他,キュボロに関する多くの知識を1冊にまとめたTHE BOOKなるものが売られています↓
アイディアの幅を広げるためにも是非読んでみてください。
キュボロを購入するときの注意点
キュボロをどこで買うかについてですが,本場のスイスに行って購入するというのは冗談で,Amazonや楽天,Yahoo!ショッピングといった各種ネットショップでも買うことができます。
2018年にメーカーでの増産体制が整った直後で,ようやく予約待ちの場合でも「1年待ち」以上になることはなくなりましたが,2024年末には即納のお店も増えました(今後また人気に火が付く可能性は否定しきれませんが)。
国内における正規取扱店についてはキュボロ社のHPから確認できますし,ネットショップで購入する場合も,正規輸入店を証明するシールが貼ってあるところを選べば,低品質な物を掴まされるリスクを減らせるとともに,パーツを紛失したなどのアフターケアにも対応してもらえるのでおすすめです。
なお,日本におけるキュボロの輸入総代理店は「アトリエニキティキ」となっていて,同店は2013年7月以降,国内の小売店とキュボロ公認販売店の契約を執り行っています。
ちなみに,私がキュボロを買ったお店は「AND CHILD」です(最近は50だけ売り切れてしまうことが多くなりました)↓
このネットショップで購入する魅力は,もともと付いてくる日本語の解説書に加え,ビー玉20個とキュボロのレシピ本(20種類のコースの作り方を解説した冊子)が追加でもらえるところです。
ビー玉はコースを通らないほどの大きなものや,逆に極端に小さなものなども入っているのですが,あえて穴に落としたくない場合や,道を妨害するために使うことができるので,意外と重宝しています↓
ちなみにビー玉の素材が変わっただけでも,コースによってはアウトしにくくなったりしますので,種類の違うビー玉を試してみると面白いです。
特典のレシピ本の価値は特に大きく,これがなければ,色々なアイディアについて知ることなしにキュボロ生活が終わっていたかもしれません↓
先に紹介したキュボロの書籍でももちろん構いませんが,導入時には指南書となるものを1つ用意しておきたいものです。
キュボロを購入できるお店探しについては,以下の記事に詳しくまとめました↓
さいごに
まとめとして「子どもの知育教育」について考えてみたいと思うのですが,藤井聡太さんの他,フィギュアスケートで有名な本田姉妹の著書でも書かれていたように,子育てに成功している家庭では,親のしっかりとした教育論が存在していることが多いです。
もちろん,その考えが正しいかどうかは,天寿を全うする最後の瞬間になるまでわからないものの,藤井聡太さんのお母様のように,自分の子どもが幼いうちに色々な機会を与えてやることは1つ正しいことのように感じています。
大人になって振り返ってみるとしみじみ感じますが,一生かけて追求するような夢や趣味に人は,小中学生のときか遅くとも高校生までには出会っているものです。
キュボロのような知育玩具は,子どもに考えることの楽しさを教えてくれるでしょう。
私は普段,塾で子どもたちに勉強を教えているのですが,名門中学校に通う子やロボット大会で優勝するような生徒たちに「幼少期はどんなおもちゃで遊んでた?」と何気なく質問してみました。
すると,ほとんどの子どもが
LEGOにはまって遊んでいたよ
と教えてくれたのです。
本当に知育玩具で遊んでいたではありませんか!
彼らの偏差値は70を超えていますが,例えば数学を教えている時に,彼らの空間把握能力が,教える側の私よりずっと優れているように感じることがあります。
そんな子たちが,どうしてそれほど簡単に空間図形を頭にイメージできるのか常々疑問だったのですが,どうやらその答えはLEGOを始めとした幼少期の知育教育にあったようです。
藤井聡太さんはキュボロを3歳頃から使い始めたわけですが,塾の子たちはLEGOを5歳から12歳くらいまで使っていました。
彼らは私に当時の使い方まで詳しく教えてくれたのですが,説明書通り組み立てるといった通常の使い方ではなく,自由に組み立てることで創造力を養うことができたようです。
特に愛用していたのはLEGOの青いバケツだったようですが,今はそれは生産終了となり,後継として「黄色のアイディアボックス」が出ています。
キュボロの代わりになる知育玩具については,以下の記事で考えてみたので宜しければお読みくださし↓
ここにきて,先のNHKのTV番組を観たときの話に戻りますが,裕子さんのコメントによると,「息子は考えることが好きだった」ということで,楽しんでやっていたところは誰しも共通のようです。
これは「ニワトリが先かタマゴが先か」という議論にも発展可能で,「キュボロが藤井聡太さんの考える力を育てた」のか,「藤井聡太さんには考える力がもともと備わっていて,キュボロを楽しんで使えたのか」まではわかりません。
ですが,どちらであっても,わが子の可能性を探る目的でキュボロのような知育玩具を試しに与えてみることは十分にあり得る選択肢の1つであるように思うのです。
子育てに勤しむ母親はいつでもずっと忙しく,子どもに与えるおもちゃの種類まで吟味している時間はないのが実状でしょう。
だからこそ,導入段階で評判の良い知育玩具を選ぶことが大切になってくるのではないでしょうか。
そして,子どもの能力を侮ることなかれで,藤井聡太さんは言わずもがな,そこらへんにいる小学生でさえ,TVゲームをやらせたら大人の自分たちよりも圧倒的に上手なわけです。
そんな子どもに,キュボロで玉の道を作らせてみてください。
最初は上手くできないかもしれませんが,すぐに空間把握能力がめきめきと発達し,周りの大人たちを大いに驚かせては喜ばせてくれることでしょう。
その際は,是非写真に残しておくことをお忘れなく!
最後になってしまいましたが,藤井聡太さんのおかげで,多くの人が幸せになっているように感じています。
私も今後できるだけ対局を観戦し,長く応援させていただくつもりです。
これからも楽しみにしています。
そして,最後までお読みいただいたみなさん,誠にありがとうございました。