「ドール用のケモミミ」ですが,全体のシルエットを変えたり雰囲気をより魅力的にしたりするのに一役買っています。
何の動物の耳にするかはもちろん,形や色,使われている素材や装着方法など,導入するにあたっては比較・検討すべき点がいくつか存在しており,イラストで描くときほどの自由度はないにせよ,様々なケモミミが入手可能です。
今では個人ディーラー様が特徴ある作品を販売してくれていますし,アニメや書籍からアイディアを得ることも容易となっています。
当記事では,まずはケモミミについての基礎知識から始めて,ドール用のものに使われている素材や装着方法,実際の使用例などを続けてみていくことにしましょう!
ケモミミとは
ケモミミとは獣耳を略した言葉ですが,その対象となるのは印象的な耳を持ったあらゆる動物となります。
もちろん,これを動物に近い見た目のドールに装着してしてしまえば普通にその動物が出来上がってしまうことになるため,基本的に獣人の耳をケモミミと呼ぶことはありません(彼らにとってみれば,それはありきたりの耳でしかないわけです)。
ゆえに,ケモミミを装着できるのはあくまでヒト型のドールに限られるわけで,ヘビや魚にはそもそも耳が存在しないのでラインナップに挙がらないこともついでに述べておきましょう。
そもそも「けものみみ→けもみみ」とわずか1語を略したに過ぎない言葉ではありますが,わざわざカタカナに変換しているあたり,特殊な文化として流行らせようとする強い意志を感じ取ることができます。
調べてみたところケモミミの歴史は想像以上に古く,その始まりは1827年の歌舞伎や1963年の手塚治虫作品にまで遡ることができるようですが(参考),歴史の重みを抜きにしてもケモミミの持つ破壊力は絶大です。
そんなケモミミを着ける位置としては2点が候補に挙がり,
- 頭の上部
- 通常の耳の位置
のいずれかになります。
前者においては通常の耳がウィッグで隠れていない場合,2種類の耳が共存しているように見えるのですが,獣っ子(ここではケモミミを備えたドールのこと)としてはこの表現も許されていて,動物らしさと人間らしさの両方の特徴を備えたドールというのを強く認識する結果になるでしょう。
以下に,主要な動物における耳の特徴についてまとめておきます↓
代表的な動物と耳
ネコ耳:人間(20~20kHz)よりも高波長(60~65kHz)の音が聴き取れる。垂れ耳と立ち耳,半立ち耳があり,片耳ごとにあらゆる方向に動かすことが可能。
イヌ耳:ネコに比べると聴覚よりも嗅覚に特化しているイヌは,耳の向きや動きで感情を表現できる。前方に伏せて威嚇や警戒を示し,立てていれば興味の表れだが,後ろに倒すのはリラックスしているか嬉しい(まれに不安な)時とされる。
キツネ耳:ネコと同様,三角形の耳が特徴。アニメだと尖っていたり縦長の二等辺三角形だったりするが,実際のキツネ耳は丸いのが興味深い。和装と合うのも特徴。
オオカミ耳:耳はネコよりも分厚く,先端は丸みを帯びているなどまさにイヌ科の特徴を持つ。なお,聴覚が落ちると野生だと短所になるため,垂れ耳を持った個体は見当たらない。
ウサ耳:基本的に長い耳だが短めのアンゴラうさぎや垂れ耳のロップイヤーなどもいる。長さに加えて可動域も広いので動きが出せるのが特徴。なぜかウサギ耳とはあまり言わず,ウサ耳と略す。
ヒツジ耳:耳は横方向に生えるが,側面から見た時,少し持ち上がった感じに配置するのがポイント。自然界では角の下に耳がくるが,角だけを付けて耳を髪の下に隠すイラストも多い。ウシやシカ,ヤギも同じ。
ちなみに,ドール用のケモミミは結構な種類が出ていてすべて常時入手できるわけではありませんが,個人ディーラー様まで含めると,以下のようなものが購入可能です↓
販売実績があるドール用ケモミミ
ライオン,トラ,ヒョウ,ドーベルマン,ネズミ,スナネコ,マヌルネコ,ミケネコ,サーバルキャット,ウサギ,ロップイヤー,オオカミ,柴犬,オコジョ,タヌキ,ウマ,シマリス,コマドリ,フクロウ,ユニコーン,ドラゴンなど
中には具体的にどれとは言わず,単に「ケモミミ」として販売されているものがある他,上では想像上の動物までをも含めてしまっていますが,天使や悪魔にエルフも人間以外の動物だという点でケモミミを持つ動物の1つに含められるかもしれません。
実際,悪魔っ子だと角がヒツジで翼はコウモリのものを使っていたりするわけですから,別段おかしな話でもないでしょう。
なお,デフォルトの要素が強まるほどケモミミ自体は巨大化する傾向にあり,頭身が小さいもの(例:ねんどろいど)やアニメ系ヘッド(リアル系ではないもの)だと,大きめの方がより似合うと感じるはずです。
ドール用ケモミミの装着方法
装着部の形状
ここではドールにケモミミを装着する場合についてみていきますが,形状がカチューシャやヘッドバンド,帽子や単に紐の形をしていたり,根本部分にヘアクリップやヘアピンもしくは磁石が取り付けられていることもあります。
とはいえ,ケモミミの作成元が複数種類の装着方法を採用していることは稀で,何か1つに特化していることが多いです。
上記画像に示したものは我が家にあるドール用ケモミミの一例ですが,クリップ型・磁石型・帽子型・ヘッドバンド型が含まれています。
使い勝手はどれも一長一短で,この中だと,髪型が乱れにくく自然に生えている印象を与えられる点で磁石型が最も優れているように思いますが,ウィッグやヘッドに磁石の跡が残ってしまったり,取り付けの際に針金を使う場合は見た目に劣ることもあったりと絶対ではありません。
特に磁石で固定する場合,テープは使わないようにしましょう。
短い時間なら構いませんが年単位での放置となると,べたつきと着色が高確率で発生します。
それ以外のものについても簡単にまとめておくので確認してみてください↓
ケモミミのタイプと長短
カチューシャ・ヘッドバンド・帽子型:取り付けに優れ,見た目も良い。ただし服装の一部として認識されるので,実際にケモミミが生えている感じはあまりしない。特にケモミミが小さい場合,アクセサリーのように見えてしまう。長時間着けるとウィッグに跡が残ってしまうことにも注意したい。
紐型:シンプルなので自然なケモミミ感が増すが,ハチマキのように紐を縛って固定するのは意外と難しい。小さいものだと結びづらいし,思った位置で固定できなかったり,時間の経過とともに落ちてきたりもする。紐がテグスのものや針金になっているものもこれに含まれる。
クリップ・ピン型:ヘアアクセサリのように付けられてウィッグへのダメージは最小限で済む。ただし保持力は磁石ほどはなく,向きを変えるのが面倒くさい。
基本的に,ケモミミと呼ぶためには実際に生えている感を出すことが重要です。
ケモミミの色を髪と揃える必要はないですが,髪型でケモミミを表現する場合は必然的に同色となり,ポニーテールやお団子といったバンスがケモミミとして使われることもあります。
装着方法
続いてケモミミの装着方法になりますが,立ち耳だからと文字通り立ち上がるように装着するだけでは不十分で,真横から見たときに耳の中が覗けるように配置するなどの工夫をしましょう!
耳が完全に前を向いてしまって横から耳の中が見えないと,表現としてはつまらないものだと見なされがちです。
一方,垂れ耳はドールの頭の形に沿うように取り付けるのがポイントで,これも頭の立体感に沿ったものとなります。
繰り返しになりますが,ケモミミの中に針金や磁石が仕込んであると,装着後に耳の形や向きを変えることができるため,感情表現もしやすいでしょう。
ドールの頭部にボリュームが出ることでシルエットも決まりやすいです。
ドール用ケモミミの素材
ドール用のケモミミに使われている素材ですが,内側はブラックボックスだとしても,外側はレジンまたはプラスチック製の硬質なものとファー素材で柔らかいもの(芯があるので軟質とまでは言えません)の2つがあります。
前者はクールでカッコよく,後者はかわいらしい印象になりがちでしょうか。
ケモミミ全体がレジン製でマグネット内蔵型のものは特に扱いやすいですが,経年劣化してしまうのが悩みの種で,私自身,白い物を購入したはずが数年後に黄変してしまったことに気づいた際は大変ショックを受けました↓
この場合,上から再塗装するくらいしか方法は残されていないのでしょうが,塗料とエアブラシを買ってきて作業するだけの元気を私は持ち合わせていないので,いまだに修復できていません。
一方,外側が毛でできているドール用ケモミミはリアルっぽさやかわいらしさが出せる反面,汚れには注意したいところです。
普段からブラシやブロアで埃除去を心がけますが,変色してしまったらぬいぐるみ用のスプレーなどを使ってできるだけ早く掃除するようにしてください↓
ちなみにケモミミの色については,メイン部分の色以外に,耳の先端や耳内,耳毛が選択できる場合もあります。
実際,それらの色を複数色(ブラック,ホワイト,レッド,ブルー,ピンク,ブラウン,ベージュ,ブロンド,グレーなど)から個別に選択し,色分けされたケモミミを販売してくれる個人ディーラー様もいるほどです。
作成期間は1ヶ月くらいは普通にかかってしまいますが,器用な方が長年継続されているようなところだと,仕上がりは大変満足の行くものになります。
ワンオペだとどうしてもモチベーションの維持が大変でしょうが,できるだけ長く続けて欲しいものです。
というのも,こうした個別対応を大量生産を行うメーカーに期待することはできないからなのですが,逆に高品質なものがお手軽価格で手に入るのはメーカー製のケモミミならではです。
なお,特に個人が作成した物でエアブラシを使って濃い色で染めたような場合に,ドール本体に色移りする可能性があることを覚えておきましょう。
獣っ子ドールに必要な耳以外のアイテム
ドールで獣っ子を作る場合,用意すべきはケモミミだけとは限りません。
もちろん,アイテムを使いすぎれば獣人に見えてしまうので限度は設けるべきですが,尻尾や足に手のパーツ,さらには小物を用意することで,獣っ子の印象をより強めることが可能です。
尻尾
中でもケモミミとセットにされることが多いのは尻尾でしょう。
特別な呼び名がないあたり,ケモミミよりも使用頻度は劣りますが,与える印象は負けていません。
このとき,尻尾を服の内部に生やすのかそれとも外部に生やすかで持つ意味合いが変わってきます。
前者はスカートがめくれ上がった感じになるところがかわいらしさに繋がるため,めくれ度合いをあえて強調することもあるほどです。
人間が異世界に入り込んでケモミミが生えたような場合にはこのように描かれることが多く,例えばソードアートオンラインに登場するような獣っ子はこのようになっています。
後者はそれ専用の服が作られているように見えることから,その獣っ子が社会に広く認められている存在として感じられます。
同じアニメ繋がりで探すとウマ娘がその好例ですね。
尻尾を生やす位置は尾てい骨があるところが最有力候補ですが,かつて人にも尻尾があったことを示す痕跡器官なわけですから当然といえば当然でしょう。
針金が入っている尻尾の場合,ぴんと張ってみたり躍動させてみたりして感情表現ができる他,丸めてしまえばリスや柴犬の尻尾のようにも使えます。
さらに推し進めて尻尾のついた服として販売されていることもありますが,これはもうデザインですね。
翼や羽など
ドールの場合,軽量な翼や羽も利用できることが多いでしょうか。
扱いやすさとのトレードオフにはなるものの,サイズを実際のものに近くすることで本物のように感じられます。
翼の位置はドラゴンやコウモリだと腰の上,鳥系の羽だと肩甲骨のあたりから生えていることが多いです。
獣っ子を構成する身体のその他パーツとしては,靴が肉球の付いた足のようなものになっていたり,ハンドパーツがそれらしいものになっていたりします↓
後から変更することはできないものにはなりますが,獣っ子を作ることを前提とすれば,元々牙が生えている子やメイクやアイが獣っぽい子を選ぶこともできるでしょう。
ドールに持たせる小物もそれっぽいものを選ぶことができ,肉球とか葉っぱのシールを付けるだけでも十分雰囲気が出ます。
骨とか首輪とか,ペットに使うようなものも探せば結構ありそうです。
ドールをキツネっ子にしてみた
それでは,ここまでの復習の意味も兼ねてキツネっ子ドールを作成してみましょう!
ケモミミですが,他の動物に比べると大きく三角形に近いのがキツネ耳の特徴でした。
最もポピュラーなアカギツネをイメージするなら耳先の毛は黒くするべきだったのでしょうが,あくまで創作なのでそこまで厳密に表現しなくて構いません(あくまで観客は自分です)。
それよりも,斜め前を向くようにセッティングするのが大切です。
今回購入したものは磁石式ということで,最初セッティングするまでがやや大変ですが,ウィッグとボディを内側と外側から2つの磁石で挟み込みます。
以下は尾てい骨部分のマグネットになりますが,特に他の工具を必要とすることなく配置が完了しました↓
とはいえ,磁石の扱いに慣れていない方だとうっかり床に落としてしまい,しかもそれが家具の裏などの変な位置に貼りついて面倒な思いをすることになるかもしれません。
私も一番最初の時は戸惑ったものですが,ハンドパーツに磁石を仕込んだり,ウィッグの磁石を何度もずらして調節するなどして修業しました。
一旦セットしてしまえば,それ以降は快適に過ごすことができるのが磁石型の良いところです。
今回使用したケモミミですが,色合いや毛並みのきれいさに加えて,耳の毛が飛び出ているところが気に入っています。
個人ディーラー製なのでウィッグの色と近い物が選択できた他,お稲荷様にヒントを得て格好は巫女服を採用し,髪型は姫カットを意識して切りそろえてみました↓
アイは縦長の瞳孔なのでキツネらしいものになっていますが,色を青にすると,髪や耳の毛色である黄色の補色となって相性的により良く見えるかもしれません。
続いて重要な尻尾選びですが,キツネのものはほうき型に作られているものが多いところ,今回利用したディーラー様は特に大きなバージョンを販売されていたのでそちらをチョイスしています。
個人ディーラー様はそれぞれが独自の工夫を施していることも多いため,むしろそれを利用しない手はないでしょう。
サイズの大きな尻尾でしたが,ケモミミ同様,強力な磁石のおかげで外れにくくなるあたりに長年の研究結果が反映されていると言いましょうか,職人魂めいたものを感じ取ることができました。
ボリューム的に横から見ても自然で,ドールの写真を撮る際はやはりちょっと大きめの方が映えますね↓
下半身にボリュームが出た関係でシルエットはAラインとなり,可愛らしさが強調された結果になりましたが,あえて尻尾を使わないことでIラインにすることも可能です。
靴はアカギツネの脚をイメージして黒の草履を選び,小物には変身用の葉っぱとキツネうどんを選ぶようにしました。
完成形はこのような感じになります↓
ケモミミを選ぶときのコツ
最後に,ケモミミを選ぶ時のコツを紹介しましょう!
好きな動物を選ぶ
好きな動物を選ぶようにすれば,どのようなパーツを取り入れればよいかが容易になります。
外見の特徴を参考にしますが,例えばもふもふの動物であれば髪や服にボリュームを持たせてください。
髪色や服の色も併せることができます。
服選びに迷う用ならその動物の出身地に合わせてみたり,その動物に課せられた役割に合わせたりすることもできるでしょう。
性格についてはポーズで演出することができます。
ちなみに,前章のキツネっ子を作る際には,最近CMで見かけた「どんぎつね」をヒントにしています↓
なお,CMで耳を押さえるシーンがありましたが,その時は人間の耳の位置を押さえていましたね。
この場合は複数の耳が共存していることになります。
獣っ子が出てくるアニメに学ぶ
今や獣っ子が登場するアニメを観ないことはありません。
それどころかもはや2次元の主役は人間ではなく獣っ子なのかもしれませんが,古くはけものフレンズやストライクウィッチーズが有名でしたね↓
アニメキャラということで,他のキャラと被らないように身に付けるものが最小限になり差別化がはかられています。
なので,装飾品などまで充実させたければ,スマホゲームのカードのような1枚絵のイラストを参考にする方が情報量は多いです。
もっとも,お気に入りのものが見つかったとて,そっくりのケモミミが見つかることにはならないのが悩みどころだったりしますが,時間をかけて理想に近いパーツを少しずつ揃えていきましょう。
ケモミミ本に学ぶ
ケモミミキャラに焦点を当てた本で,イラストをみることで,服装を含めたトータルコーディネイトのアイディアを簡単に得ることができます。
実際,当記事を書くにあたって以下の本を読みましたが,獣っ子を作るなら耳と尻尾を着けたら終わりだと思っていた自分が恥ずかしいです↓
ドールの服装やポーズ,使われている色や素材についても多くの着眼点が存在することを学び知ることができたように感じています。
この書籍はケモミミキャラのイラストを描くための本ということで,ドール用のものではないのですが,各動物の特徴について詳細に述べられていた他,性格についてまで書かれていて大変参考になりました。
キャラクターを描く場合,ドールよりも細かく調節が可能ですが,服装との色バランスだったりの方向性を決める上では大いに役立つはずです。
先のキツネっ子で触れた補色の話も,実はこの本から学んだことの1つでした。
まとめ
以上,ドールのケモミミについて,その特徴から始まり素材や装着方法についてみてきた他,実際の使用例や作成のヒントになるアイディアについてもまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
ケモミミに限らず,尻尾や小物においてもイメージする動物の特徴を採用することが重要です。
今回はふわふわなファー素材でAラインのシルエットを作ることで可愛いらしいドールを具体例として示しましたが,硬い素材を選んでIラインにするとカッコ良い獣っ子を作ることもできます。
いずれにせよ,ケモミミはアニメに限らずドールの世界においても有効ですので,是非一度は挑戦してみてください。
ケモミミを購入できるお店については別の記事にまとめておきます。
これからも多くの独創的なケモミミが登場することを祈って締めの言葉とさせてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。