世の中には変わったクイズがいくつもありますが,今回紹介する「ウミガメのスープ」は水平思考推理(クイズ)ゲームと呼ばれるジャンルです。
ポール・スローンとデス・マクヘール2人による第1冊目が出版となったのは1991年のことで,それからシリーズものとして3冊が追加されています。
そして,同じコンセプトながら,日本にあるクイズ法人カプリティオが問題を製作したカードゲームが2019年に幻冬舎から発売されました。
今回は両者のレビューを行いながら,どのような違いがあるのかについても言及していきたいと思います。
水平思考推理ゲームとは
水平思考推理ゲームの根底には,1970年にエドワード・デ・ボーノ博士が提唱した「水平思考(ラテラル・シンキング)」があります。
それに対するものとして「垂直思考(ロジカル・シンキング)」というものがありますが,これは「前提から仮説を立て,推論して結論を得るもの」ということで,おそらく多くの方が学校生活などを通して身に付けてきたものでしょう。
ですが,水平思考では仕事のイノベーション(変革)に向けて,新しいものの見方をします。
「前提を疑っては,奇抜にものを組み合わせたり,ルールを変えてみたり,チームを活用する…」などといったものは,すべて水平思考に属する考え方です。
一言で言えば「柔軟性」が鍵となります。
ただし,これら思考法のどちらか片方しか身に付けられないものではなく,クリエイティブ・シンキングやクリティカル・シンキングなどの思考法と並ぶようなものだと考えておけば良いでしょう。
ちなみに,接着力の弱い糊と本にはさむ栞からポストイットを閃いた時などには,この水平思考が関与したとされます。
さて,そういったわけで,水平思考推理ゲームを考え出した1人が,かつてのIBMにおけるトップセールスマンだったとしても別に驚きませんね。
ルールですが,出題者が出す謎を解答者たちが自由に推理して解いていきます。
チームの活用も水平思考の要素でしたから,できるならば解答者は3人は必要です。
これに出題者が1人必要ですので,理想的なプレイ環境は4~9人で遊ぶこととなります。
出題者は質問だけでなく答えまであらかじめ理解しておきますが,解答者たちの質問に対し,「はい・いいえ・関係ありません(わかりません)」の3つのうちの1つしか返せないことに特に注意しましょう。
つまり,「犯人は男ですか?」とは質問することはできても,「犯人は男ですか?女ですか?」とは聞けないということです。
とはいえ,「それは良い質問です!」などのコメントであったり,あまりに解けなさそうな場合は多少のヒントを与えることも許容されます。
特に難易度の高い問題だと,1問に1時間以上かかってしまうこともありえてしまうゲームですし,実際,本やカードゲームの取扱説明書にはヒントの存在が示唆されていました。
逆に出題者の目的は,解答者をうまく正解へ導いて楽しませることです。
例えば理想とされる教師とは,うまくヒントを出しては,担当する生徒の実力よりもちょっと上の問題を解かせてあげられる存在だとされます。
解答者はチームで協力し合い,そして出題者も含めた全員が楽しい知的時間を過ごせるように遊んでみてください!
なお,次章から書籍とカードゲームをそれぞれレビューしていきますが,表題にもなっている「ウミガメのスープ(原著ではアホウドリのスープ)」についてはネタバレしています。
多くの方が水平思考を知るにあたって一度解いていると思って選んでいますが,もし答えを知らない方は誰かに出題してもらって,推理ゲームを最後までやり終えてからこの先を読むようにしてください。
それくらい完成度の高い良問ですので,すぐに答えを知ってしまうのは勿体ないです。
ウミガメのスープの書籍について
日本語版で説明しますが,ウミガメのスープは全部で4冊が出ています↓↓
- ウミガメのスープ
- 腕を送る男
- 札束を焼く強盗
- 借金をふみ倒せ
ここでは第1巻をもとに見ていきますが,難易度としては全部で4段階に分かれており,全部で81問という結構な数が収録されていました。
登場する順番は簡単なものから並んでいるわけではなく,現に一問目に来るのは最難度を誇る「ウミガメのスープ」です↓↓
このように挿絵が入る問題もあるので,やや補完されるところもあります。
またページをめくるとヒントが書かれています。
もし出題者が不在のまま1人でやってみたいと思ったら,行き詰まった時に利用してみてください(右ページには次の問題が確認できます)↓↓
周りに仲間がいたらこのような質問が出てきたはずだと考え,自分で答えを考えてみましょう。
私が妹の家族に出題した際は,5歳の子どもから大きなヒントとなりうる質問が飛んできて驚かされました。
子どもには理解ができない概念もあるので,答えに至ることはないでしょうが,これまた面白いところですよね。
上のヒントのうち3つ目と4つ目には,YES・NO以外のコメントも見受けられます。
こういった良いヒントを出すために,出題者の方は問題や解答者の思考状態についてより理解しているのが理想です。
以下に答えを示しますが,ヒントとは別ページにあるよう配慮されています↓↓
余談ですが,ウミガメのスープの解答として「息子」というワードが出ていないものもありますが,親友よりは家族と言われた方が,自殺する理由としては優れているような気がします。
さすがオリジナル版ですね。
おまけ的な問題として,途中に「ひっかけクイズ」という問題がある他は,このような調子で進んでいきます。
1人でも読めるというのが1つポイントで,興味を持たれた方は是非1冊買ってみてください↓↓
ウミガメのスープのカードゲーム
続いて紹介するのは,幻冬舎から出ているカードゲームです。
先の書籍版は原著をただ翻訳したものでしたが,こちらは日本人が一から作ったような問題が多数含まれます。
これにより,文化的によくわからなかったもの(原著者はスコットランドとアイルランド人の方です)はほとんど見当たりませんでした。
「カードゲーム形式でより気軽に」という方針からでしょう。
難易度的には,より取っつきやすい問題が多く,10分もあれば多くの問題が解けてしまいます(製作者との年齢的なギャップもありますし,思考するためにある程度の人生経験も必要ですから,対象年齢は10歳以上となっています)。
問題数は全84問で,難易度の設定は5段階です。
問題はこのようにオモテ面に書かれていますが,左下に難易度が書かれ,さらに右下に目標時間が書かれています↓↓
最初は目標時間に関係なく楽しくやればよいのですが,後述するようにタイムアタックして勝敗をつけることも可能です。
上記カードを裏返すと,そこには答えが書かれているので,出題者は真っ先にこの部分を確認しておきましょう↓↓
なお,「解答のカギ」というのは,正解にするかどうか迷った際にOKとする基準を示したものです。
実際どのように遊ぶかについてはその場その場でアレンジするのがおすすめですが,取扱説明書で示唆されているオプションとしては,以下の2つが挙げられていました↓↓
- プレイ回数を決めて,一問クリアするごとに正解を答えた人が難易度の★の数だけ得点し,全ゲーム終了後にもっともポイントを確認した人を勝者とします
- 目標時間内に一番早く答えられた人が勝ちで,答えが出なければ全員の負けです
面白い遊び方があったら教えてください。
わが家では,誰も解けなかった問題はどこかにまとめておき,最後に写メして各自持ち帰るのがルールです。
なお,こちらには続編のウミガメのスープ2が2020年7月に出ています。
まとめ
以上,ウミガメのスープの書籍とカードゲームのレビューを中心に行ってきましたがいかがだったでしょうか。
私が本ゲームについて知ったのは人づてでしたが,きっとYouTubeなどで元々は知ったのだと思います。
最初に解いた,ウミガメのスープが面白かったので興味を持って上の2つを買ってみたのですが,ゲームの進行を気にせずゆっくり思考する場合は書籍が,そして複数人が集まってわいわいやるならカードゲームの方をおすすめします。
これで遊んだからと言って水平思考が身に付いたかと言えばわかりませんが,想像する楽しさは確かに感じられますし,自分がかろうじて解けた問題を他人に出したときに,思わぬ人物の一言から解決へと向かう思考の流れは,出題者の立場で観ているからこそ気づけるものです。
出題者の立場ではヒントの出し方に頭を悩ませる場面もあるので,解答者と出題者の立場で2種類の遊び方ができるもの本ゲームの魅力だと思います。
そういった意味では,すべての問題を解いてしまって答えを知ってからも,出題者に専念するといった別の楽しみ方ができるので,思いのほか長く遊べるのではないでしょうか。
是非,大人数でやってみてください↓↓
最後までお読みいただきありがとうございました。