2017年の話になりますが,Amazonでおもちゃを買おうと思って色々と見ていたら,なぜだか一つだけ異様な売れ行き状況になっている将棋盤がありました。
当時は藤井聡太さんが破竹の勢いで連勝を重ねていた時期で,将棋教室の人気が高まったり将棋関連のグッズが売れていたりしたわけですが,数ある将棋盤のうち,なぜその将棋盤だけが売れているかの説明がつかなかったわけです。
その将棋盤の名前はくもん出版の「NEWスタディ将棋」です。
今回はそんなスタディ将棋の魅力について紹介します。
スタディ将棋はすべてが異様
最初にスタディ将棋を見て驚いたのは,その異様な見た目です↓
「おもちゃ」に分類されていた商品だったので,プラスチック素材やマグネットが金属板に引っ付く系の外観を想像していた私ですが,このスタディ将棋はシナという木材でできています。
いわゆる「信濃(長野)の木」で有名なシナノキですが,系統は菩提樹の仲間ということで,お釈迦様の木なのかなと思って調べてみると,どうやらあちらは別種のようでした。
とはいえ,このスタディ将棋で注目してほしいのは将棋盤よりも駒の方です↓
いかがでしょうか?
普通サイズの駒ですが,小さな文字と謎の矢印たちが描かれています。
見た目が異様に感じられた理由の正体は,駒の動かし方が一つ一つの駒に印刷してあるからだったわけです。
動かし方をいちいち確認せずとも,駒に目をやればすぐにわかってしまうということで,なるほど,確かにこれは将棋を始めたばかりの方が学習(スタディ)するのに非常に役立つ仕様のように思われます。
そしてもう1つ,私的にそれと同じくらい異様だったのは,驚くほど高値での販売だったことです。
あくまで2017年の話で,今では在庫薄の状況は解消されていますが,当時のスタディ将棋の売値は以下のようになっていました↓
とある値段解析ソフトによれば,藤井フィーバーが騒がれるにつれて値段は高騰し,2017年5月5日付近の売値はなんと8000円を超えていました。
当時の定価は3520円の商品でしたので,実に2倍以上の値がついていたことになります。

子どもの日で需要が増えたのはあったにせよ,それだけ当時の藤井人気は高かったということで,その後もしばらくは1.5倍以上の値段が続きました。
今では供給の方は安定していますが,当時は大変に入手困難だったのです。
スタディ将棋と藤井聡太さんの関係
当サイトを訪れてくださった方はすでにご存じかもしれませんが,このスタディ将棋と藤井聡太さんの間には深い関係があります。
「将棋世界」という雑誌を読んで初めて知ったことですが,藤井聡太さんの祖母がこのスタディ将棋を買い与えたということで,彼が将棋を指す最初のきっかけになったという話を聞き,非常に驚いたと同時に欲しくなりました。
しかも,当時の藤井聡太さんの年齢は5歳ほどです。
以前紹介した積み木おもちゃのキュボロも3歳のときに買い与えていたので,なかなかに教育熱心なご家庭で育ったことがうかがえます。

将棋を幼稚園児が始めるというのは,自分の感覚からすると早いように思いましたが,戦前に生きていた祖父のアルバムを見返してみると,自分よりも何倍も速く生きていたような感じを受けますし,何かを始めるのに早すぎるなんてことはないのでしょう。
それこそ,頭を使うものであれば,早く始めるに越したことはないとも聞きます。
ピアノも早くに始めないと絶対音感が育たないようですし,同じ時間をかけるのであれば,純粋に早く始めた方が練習量が増えることは確かです。
もちろん,興味を示すかどうかは本人次第ですが,才能ある若者が実際に使っていた将棋盤をわが子に買い与えてみたいと思う親が増えるのは至極当然のことでしょう。
スタディ将棋の魅力
ここでもう少し詳しく,スタディ将棋についてみていきましょう!
「スタディ」という名前にふさわしく,製造元は子どもの知育に強い「くもん出版」です。
大きな魅力は先述した駒で,動きが直接書いてある点は唯一無二の存在で,裏面には成った駒の動かし方も書いてあります。
多少大きいですが,サイズは実際に使われる本将棋のものと大差なく,駒はくさび形をしていて,収納ケースは駒台になるので,普通の将棋と使い勝手はあまり変わりません。
むしろ,将棋盤が半分に折れるので,携帯性・収納性の点で大変優れています↓

さらに,この将棋盤の教育的価値を高めているのは駒や盤だけではありません。
付属の解説書にも工夫が見られます↓
全部で30ページ強からなるこの解説書ですが,ここでしか読めない記述がありました。
最初こそ,将棋の基礎知識や駒の動かし方から始まるのですが,
中盤あたりから,独自色が強くなってきます。
例えば,12ページから始まるのは「歩なし将棋」の説明です↓
こうした解説がなされている将棋盤はあまり目にしません。
調べてみましたが,頭を使いゲーム性にも優れる将棋というスポーツは,どうやら織田信長の時代からあったようです。
500年くらい前からルールが変わっていないということで,昔も今も戦術で相手を追い詰めていく面白さは共通なのでしょう↓
このあと解説書では普通の将棋の説明が始まるのですが,最後に控えているものは何だと思いますか。
それは詰め将棋の問題です↓
藤井聡太さんは詰め将棋がすごく強いことでも有名で,小学6年生の頃から,大人のプロも集まる詰め将棋解答選手権で5連覇しています。
そんな彼が初めて出会った将棋盤の解説書に載っていたのが,まさにその「詰め将棋」だったという事実は,これまた何かの縁なのでしょう。
なお,このスタディ将棋は2009年6月に発売が開始されているので,実際に藤井聡太さんが使ったものと同じ仕様であると考えられます。
ちなみに2023年のリニューアルでも同仕様の解説書が付属しており,追加でスキルアップブックなるものも付いてくるようです。
実際に購入してレビューしているので,細かい使い勝手について知りたい方は以下の記事をお読みください↓
まとめ
以上,藤井聡太さんが将棋の世界に入るきっかけとなった,くもんのNEWスタディ将棋の紹介記事でした。

私は小学生のとき,祖父から囲碁を習う機会があったのですが,「外で遊ばせたい,地味なことをやらせないでくれ,受験がある」などの理由で母親に取り上げられてしまいました。
後になって,祖父が「惜しむべきは,あの時,孫に囲碁を教えてやれなかったことだ」と悔やんでいたのを今でも覚えています。
論理的な人間,落ち着いた人間に育つことを教えるのに囲碁が適しているというのが祖父の持論でしたが,将棋もきっとそれに近いものがあるでしょう。
幼少期のことを思い返してみると,将棋は小学校に入るとみんなと遊ぶことが多くなり,「羽生の頭脳」というタイトルの本がクラスメイトの愛読書でした。
その後,私は卓球にハマって,近くの文化センターに通うことになりますが,
あのとき,祖父に囲碁を習っておきたかったな
と今更になって思う次第です。
子どもたちには,今しかできない楽しみを大切にして,好きなことに熱中して生きていってほしいなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。