ドールメーカーは「オプションヘッド」などと呼ばれる顔の描かれていないのっぺらぼうな頭部パーツを販売していて,オーナーがこれらを自由にメイクして世界に1つしかないオリジナルドールを作成することができます↓
手描きということでパッド印刷より正確性や丈夫さの点で劣りはするものの,色を繊細に描写できたり豊かな表情を付けられたりなど,手作業ならではの魅力が表現できることも確かです。
実際,数千円あれば買えてしまうオプションヘッドが数十万円以上で取引されることも平気でありますから,多くの人が入札に参加しているのを見ると「欲しがっている人は思った以上に沢山いるものだ」とすぐに実感できるでしょう。
今回はそんな「カスタムヘッドの買い方やその魅力」を中心にまとめていくことにします。
カスタムヘッドとは
カスタムヘッドとは,メーカーが販売するボディに対応したヘッドを基に,「カスタマー」と呼ばれる個人が塗料などを用いてメイクを施した頭パーツのことです。
その上でさらにアイを手描きのもので作ったり,ウィッグの色を染め直してカットしたりすることもありますが,これらのパーツを別の物に変えたところで別のドールとはならないでしょうから,顔はドールの中で最も重要なパーツであると言えるでしょう。
メイク方法を簡略化して言うと,面相筆とアクリル塗料を使って色を塗り重ねていき,パステルやコーティング用のスプレーなどを使って仕上げることになります。
最近では以下のような指南動画も増えてきており,道具も手に入りやすいことも相まってより身近な存在になりました↓
とはいえ,オークションで自作のカスタムヘッドに定価以上の値が付くのは至難の業です。
その人に才能があることはもちろん,自分独自の魅力を付け加えていかなければ多くに振り向いてもらえず,宣伝活動も場合によっては必要になってきます。
なお,10万円で落札されたカスタムヘッドが落札価格1万円のものの10倍凄いのかと言われれば決してそのようなことはありません。
世の中の景気やタイミングに大きく左右されますし,同じ作家さんの作品であっても終了価格は様々だったりします。
なので,落札価格はあくまで目安の1つにすぎないわけですが,作り手の立場からすれば高い値が付いた方が嬉しいでしょうし,高い技術を備えた方が市場で需要がある物を作ることができれば世間はそれを放っておかないでしょう。
そうした評判はSNSでもすぐに共有されるはずです。
ところで,オークションでの説明文を読んでいると,既製品がまるで至上であるかのように書かれていることが多いのですが,印刷箇所がズレている既製品も意外と多く存在するため,写真と油絵の違いではないですがどちらか一方が優れているわけではないように感じます。
とはいえ,メーカー様の許しがあってこそのカスタムヘッド販売ですから,そこらへんの事情はしっかりと把握して供給元を立てていかなければなりません。
そんなカスタムヘッドですが,オークション形式以外に一部定額で売られていることもあります。
とはいえメインとなるのは前者ですので,次章からはヤフオクでの購入を中心に述べていくことにしましょう。
カスタムヘッドの入札前に行うこと
ヤフオクで残り時間が終了ギリギリになってしまうとどうしても判断力が鈍ってしまうため,できるだけ早いうちから色々と準備を済ませておきたいものです。
画像をよく確認する
現物を手に取って見られないことが多いカスタムヘッドなので,「実物が写真と全然違う!」などとならないよう注意深くみていくようにします。
不鮮明な画像しか掲載されていないものは避けるようにしますが,それでも意図せず写真に加工がされていたり,照明の当たり方や見る角度によって誤解を与えたりは十分に起こり得るものです。
出品者がわざわざマイナスプロモーションになる画像を出すことはないと思うかもしれませんが,難がある箇所をちゃんと明示している方の方が信頼できますし,次回以降の出品にも良い影響を及ぼします。
「難あり」とされやすい技法としては「ソフビ盛り」が筆頭になるでしょうか。
主に目の大きさを調整するために使われ,例えば片目を瞑ったようなカスタムヘッドを作る際にはソフビですき間を埋める作業をしますが,もともと使われているソフビとの色合いや厚みとあまり馴染まず,結果としてその境目が分かってしまう状態になることがあります。
メイクやウィッグで隠すことである程度対応できるとされていますが,人によっては気になるかもしれません。
境目を探す目で画像をみればその違いは明確だったりしますが,ぼんやり見ているだけでは気が付かないことも多いように思います。
もっとも,既製品でも最初からテカリがあったり(初期不良ではない),気が付くと何やらシミが生じていることも多々あったりするわけで,それに文句をつけるのはお門違いでしょう(この場合,「入札を遠慮してください」という文言が効いてきます)。
その他,オプションヘッドにもともと存在していた気泡とか,顔を削る際に生じたテカリやコーティング時の埃混入などが難ありに分類されるものです。
以上のことに注意しつつ,必要に応じて商品画像を別画像と合成してみたりして入札するか判断してみてください。
なお,出品者によっては,別ページからより高画質な写真を確認できたり,動画で別角度から眺められたりすることがあり,その場合だとより明確にイメージすることが可能です↓
付属品の有無を確認する
次に,商品の説明文を読み出品内容をチェックします。
ドールの場合,ヘッド以外に以下のような付属品が存在することもありますが,決して写真だけをみて判断することのないようにしましょう↓
- アイ
- ウィッグ
- 衣装
- ボディ
カスタムヘッドのみの出品であっても,写真ではアイやウィッグ,さらにはボディに衣装までがすべて揃ったトータルコーディネート状態の画像を見せられることがほとんどのはずです。
よって入札者側はそのドールが醸し出す雰囲気全体を気に入るかどうかを判断基準に入札を決意するわけですが,撮影に使われている付属品については,商品説明の文やタイトルを読まない限りはわかりません。
カスタムヘッドはあくまでポテンシャルを秘めた状態であり,これら付属品がそれを十分に引き出すことを考えると,再現性についても考慮しておくべきです。
実際,ボディを新しく買おうと思っても数ヶ月くらい入荷されないものもあるわけですし,宣伝写真のアイやウィッグや衣装が廃版品でもう手に入らない物かもしれません。
といったわけで,付属品難民にならないよう,出品内容の確認とどこまで再現できるかについてはあらかじめ考えておくようにしましょう。
入札について考える
カスタムヘッドの場合,一点物の出品かつファーストオーナー探しになるため,「お得に買う」などという概念は存在しません。
欲しいと思った人が自分1人だけでない限り,入札額はどこまでも上がっていきます。
極端な例にはなりますが,出品されてすぐに2人が入札,現在価格は一気に高値へと到達しそのまま最後までその2人だけで争うことも実際にあるわけです。
ならばどのようなタイミングでいくら入札するかを予め考えておいた方が良く,オークションの終了間際には残り時間が5分を切った状態でいくら入札するかの選択を不断に迫られることになるわけですから,そこでの判断を誤らないことが重要となってきます。
もちろん,高値が更新されたら自分がそれ以上の額を提示するだけで必勝となるのですが,稀に数百万円に達することもあるため,引き際についても考えておくべきでしょう(後述しますが,高額落札の支払いには制限がかかるため,慣れていないと厄介です)。
このとき,基本的には過去の落札価格が参考になるため,評価欄から半年分くらいの内容を遡ってみておくことをおすすめします。
同時に,評価内容についても問題がないことを確認しておきましょう。
自分が入札したときだけ落札価格が低く終わるようなことには決してならないため,これまでの最高価格をちょっと超えるぐらいのことは覚悟しておきます。
いきなり自分の限度額を入札するか,小刻みに複数回に分けて小出しにするかはご自身の判断に委ねますが,作家さんの魂のこもったカスタムヘッドは少しでも安く買うような物ではないので,入札額を1円単位で工夫するなどの小細工は必要ないでしょう。
とはいえ,ラッキーナンバーでゲン担ぎをしたり,自分の引き際を特殊な入札価格に設定する人がいないわけではありません。
各々,自分の信念に従って後悔のないように参加しているように思われます。
もちろん,終了時間間際にヤフオクを確認できないようであれば限界額を入札するしかありませんし,行くところまで行くか決めかねているときは,「このくらいの額まで達するのであったら競り負けても諦めがつくかな」という額を入れておくことで気持ちの整理が付けられるでしょう。
なお,オークションの場合,最終的には必ず一騎打ちになるものです。
「この相手さえいなければもっと安く買えたのに!」などと嘆くことがあるかもしれませんが,最後まで入札こそしなかったものの,もう少し現在価格が低ければ入札していたという潜在的なウォッチャーはほぼ確実に存在しているので,決して競争相手を恨むことの無いようにしましょう。
なお,カスタムヘッドのオークションにおいて評価ゼロの方の新規参入は結構見られるのですが,その場合,質問欄からの挨拶が必要になることが多いです。
相手からの返信時間が必要になるため,時間に余裕をもって出品者の許可を得るようにしてください。
ヤフオクで落札した後の振り込み
自分がオークションの終了時間に立ち会うことができない場合でも,出品者はすぐに連絡や入金確認が取れることを心配しているはずです。
なお,24時間以内に連絡が取れないような場合に,落札者都合でキャンセルとなることがあります。
これらについてはあらかじめ説明文に書かれていることがほとんどですが,折角落札できても取消されてしまえば元も子もありませんので,できるだけ早く入金を済ませるようにしましょう。
もちろん,自分に支払う意思があっても,オークションの決済システムの都合上,困難に見舞われることもあります。
例えば,数十万円を超える落札になった際,振り込みできる限度額を超えて入金エラーが表示され,先に進めなくなってしまうかもしれません↓
保有しているカードの利用限度額には十分余裕があったとしても,ヤフーオークションの決済方法によっては制限が設けられているのが普通で,例えばPayPayのクレジット払いや銀行カードからのチャージは50万円までとなっています↓
なお,コンビニ支払いは30万円までで,実質無制限に振り込みができる銀行振込という支払い方法も。窓口の営業時間中に振込手続きを行わなければならないことに注意しましょう。
51万円から100万円までの落札価格の場合,以下のような工夫をすることでネット上で支払いを行うことができるようになります↓
- Paypay残高に50万円を超える額をチャージし,足りない部分のみをPayPayカードで支払う
- 24時間以上の間隔を空けて2回の送金を行って対応する(1回50万円まで,保有限度額は100万円)
ヤフオクで落札したカスタムヘッドの到着後
落札後は速やかに受け取り連絡を済ませましょう!
前章の入金手続きが済んだ時点では,あくまでお金はヤフー側に届けられただけで止まっています。
受取連絡までが済んで初めてカスタマーの手元に振り込みが行われます。
もちろん,無事に届いたかを何より心配されているはずです。
ヘッドの状態を確認する
届いたカスタムヘッドをみてみると,その梱包に至るまでよく考えられていることがわかります。
輸送中に傷が付かないように適切に配置されている他,ビニールの種類まで厳選することでヘッドと接する部分にテカリが生じてしまわないように工夫している出品者もいるそうです。
そもそもの梱包がわくわくするものだと,段ボールを開けたときに思わず声が漏れてしまうことになるかもしれません。
梱包の袋なども可愛くて捨てられない方も多いようで私もその1人です。
カスタマー様の名刺などもついつい飾ってしまいます↓
評価する
問題がないようであれば受取連絡をしましょう!
絶対正しいかどうかはわかりませんが,このとき併せて感想を伝えると出品者の励みになるようです。
また,Xのアカウントを持っているカスタマー様であれば,タグをつけた状態で投稿することによってその後の様子を伝えることもできます。
この繋がりを利用して,同一作者のドールがイベントで一同に集うこともあるようで楽しいですね!
同一カスタマーによる既製品との比較
今回紹介したカスタムヘッドですが,まさに人の手が入っているからこその表現力で,色の濃淡や線の長短などのち密さは眺めていて惚れ惚れするものでした。
毎日このような「芸術品」が身近で鑑賞できるようになったわけですから,カスタマー様には感謝の気持ちしかありません。
なお,この方は既製品ドールのヘッドデザインも担当している方なので,発売時期が近い既製品と比べてみましょう!
具体的な商品名は,アイリスコレクトプチの記事でも紹介したアゾン社の「うゆり~夏の思い出~」になりますが,多くの共通点を見て取ることができます。
以下はあくまで私個人の感想で,しかも現時点で手元にあるものを頼りに判断したにすぎません。カスタマー様の全容に迫る分析ではないことを最初に断っておきます。
メイクの比較
まずはメイクの比較ですが,アイラインの色使いや大きさ,濃いめのチークや照れ線や点の入れ方などにカスタマー様の特徴を見て取ることができました↓
アイコレプチの別作者のものとも比べてみましたが,オレンジ色の退色部分や上まつげの向き,アイホールの大きさを飛び越えた末端部分の取り方はこの作者様ならではのものだと感じられます。
口の造形は開口カスタムということで,一体誰が最初に始めたのかまでは存じませんが,安定性を犠牲にする代わりに未曽有の可愛さが生じていることは明らかです。
ソフビ盛りと同様,この技術はカスタムヘッドならではのもので,メーカーが開口したヘッドを採用しては口パーツだけ別に買えるような時代は当分の間は来ないでしょう。
アイの比較
今回の出品ではアイも4種類がセットになっていました。
これらも既存品のものと比較してみましょう↓
一番右にあるのがうゆり(既製品)のアイになりますが,こちらもこのドールオリジナルのものでサイズは20mmのアイホールに合うものであるのに対し,カスタマー製のドールアイは22mmのサイズです。
大きさやデザインは多少違えど,これらのデザインはすべてどこかしらが似ていて,同じカスタマー作の感じが漂っています。
白目部分を少なくした大きなアイが特徴的で,追視や光の反射性能は控えめな分,限られた範囲をしっかりと見つめる強い目力に射貫かれてしまう方は多いでしょう。
最近のドールはアイの造形が複雑なものになってきていますが,上で紹介したアイも今後ますます改良されていくように思われます。
さいごに
なお,今回のカスタマー様とは落札後にメッセージで少しやり取りさせていただきました↓
このような作成エピソードを楽しく聞かせてもらえたのは落札できたからこそでしょう(もちろん,出品者様のご厚意があってのことで,全員がそうだとは限りません)。
カスタマー様の中には出品時に作成時の思いを詳細に公開されている方も見受けられますが,生みのカスタマー様から直接このように話を聞けたことで,お迎えできたドールの愛着が増したことは確かです。
それ以外に,万一の時はメイク直しやアイ交換にも応じていただけるとの話があって恐縮しています(こちらも全員がそうだとは限りませんし,永続性を保証するものではありません)。
繰り返しになりますが,こうした体験はカスタムヘッドを購入したからこそできたことです。
セカンドオーナーといった形での入手も考えられます(「里子に出す」とも言われるようです)が,私としては作者様から直接購入されることを最優先にすることをおすすめします。
今回述べた注意点を頭に入れて入札することで,すぐに手放すリスクは十分に下げられるでしょう。
才能溢れるカスタマー様たちは個人でやられている以上この先どうなるかはわかりませんが,一期一会のご縁を大切にしていきたいものです。
ヤフオクをみていると,今日もまた新しい登録者たちがドールの魅力に魅せられてやってきています。
この方々の前にベテラン勢が厚い壁となって立ちはだかるのか,それとも彼らの一目惚れが報われるのかは神のみぞ知るところではありますが,オークションならではのドキドキ感を楽しんでもらいたいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。