今回は日本で2023年11月に発売された「CUBORO THE BOOK」をレビューしていきたいと思います。
元々は同年1月にドイツ語で書かれたものの日本語版です。
著者はセバスチャン・エッター,マティアス・エッター,リリアン・クンツラーの3人ですが,2人目の方がキュボロの開発者なので,本書は世界で最もキュボロについてよく知る方が書いた書籍となります(ちなみに,1人目のセバスチャンはマティアスの息子で,キュボロ社の現社長です)。
なお,本書は250ページを超えるボリュームを誇り,単に使い方や作品例をまとめただけのものではありません。
綺麗な写真やイラストも豊富で,上2人のお姿も何カットか拝むことができました。
CUBORO THE BOOKには一体何が書かれていて,値段に見合うだけの価値があるかどうかを確認したい方は是非お読みください!
CUBORO THE BOOKの特徴
まず開いて誰もが感じるであろう驚きは,紙面形式です↓
ちゃんと製本できていないのではと一瞬誤解してしまうかもしれませんが,このような形式になっていることで,分厚い本書を開いた状態で維持することができます。
ブックスタンドやブックストッパーを使わずに済むので大変便利です。
肝心の中身ですが,CUBORO THE BOOKは収録内容が幅広く,以下のようになっています↓
本書の目次
玉の塔とは:全14ページ。CUBOROの魅力やどんな商品があるのか簡単に紹介している。パンフレットに書かれていそうな内容。
CUBOROで遊ぶ:全50ページ。大人向けの内容で,子どもがCUBOROを使うことでどのような学びが可能になるのかまとめている他,Starter setとExtra setのすべてにおいて,特異的なパーツについて言及している。
組み立てプラン:全92ページ。お手本として利用できる作品例が38個載っている。
クイズ:全40ページ。Starter Setを使ってクイズに挑戦できる。問題数は全部で16問。
腕比べ:全12ページ。複数人がCUBOROを持ち寄って遊ぶときに,作品を採点して得点が高い方を勝ちとする対戦が可能。ここではそのルールを学べる。
その他の使い方:全10ページ。教育現場やワークショップの紹介。
CUBOROのはじまり:全18ページ。CUBOROの歴史や製造過程に関する内容。
CUBORO用語集とパーツの概要:全4ページ。
私なりの簡単な解説も載せましたが,これだけのボリュームはもはや「専門書」と呼んで構わないレベルで,定価は9900円しました。
基本的には大人向けの内容になっていますが,メインコンテンツである「組み立てプラン」や「クイズ」は子どもでも読み進められるように,イラストが豊富で文字は大きめとなっています(ただし,漢字にフリガナは振られていません)。
ところで,今の時代,公式も含めて多くがネットにかなりの情報を載せているので,例えばCUBOROの歴史だったり,売られている製品や含まれるパーツだったりは調べればすぐにわかるでしょう。
例えば,公式サイトを訪れれば多くの悩みが解決できるはずで,たとえドイツ語で書かれていてもGoogle翻訳などですぐに日本語に変換できてしまいます。
また,CUBORO THE BOOKで自分の持っていない追加パーツが紹介されたり,上位互換のパーツでしか作れない作例を示されたりしたところで,特に有用とはならないでしょう。
なので,人によってCUBORO THE BOOKの価値は異なるとまず最初に断っておきます。
CUBORO THE BOOKの作例掲載数は38個
キュボロの基本セット(Starter set)や追加セット(Extra set)は昔から箱が色分けされているのですが,CUBORO THE BOOKにおいても同じ色使いが採用されていました(p.35より引用)↓
例えば基本セットは
- JUNIOR
- STANDARD(16・32・50)
のような色になっていて,追加セットは,
- TUNNEL
- PRO
- DUO
のような感じで,それぞれの色がブロックのそれと対応しているわけです。
逆に言うと,上の写真の作品を作るためには5種類ものセットを揃えなければなりません。
とはいえ,次章で述べているように,多くの作品は基本セットのSTANDARDとJUNIORだけで作成できるので安心してください。
私なりに数えてみたので,結果を以下の表にまとめたいと思います↓
使用するセット名 | 作例数 |
JUNIOR | 5つ |
STANDARD16 | 5つ |
STANDARD32 | 5つ |
STANDARD50 | 5つ |
JUNIOR+STANDARD | 3つ |
STANDARD+追加セット | 10つ |
3種類使用するもの | 5つ |
CUBORO THE BOOKの作品が載っているページの構成では,使用するセット名が最初に書かれているので,必要なものを用意したら(基本的にはすべて使い切る感じです),1段目から順番に組み立てていきましょう。
以下はSTANDARD32とCUBEとKICKの3種類のセットを使用した作例になりますが,見切れてしまっているものの,右ページには完成形の全体像も書かれていました(p.158-159)↓
別のセットのパーツを使う場合は一時的にごちゃ混ぜになってしまいますが,セットに特有のパーツばかりなので,さほど迷うことなく元のケースに戻せるはずです。
とはいえ,必要に応じて,巻末ページの一覧も参考にしてください↓
ちなみに当サイトでは,それぞれのセット内容を将棋の藤井聡太に続け!キュボロという積み木おもちゃを入手せよでまとめています。
CUBORO THE BOOKのクイズがとても良い
個人的に一番良かったコンテンツは「CUBOROクイズ」でした。
右ページに問題が書かれていて,ページをめくった左側に答えが掲載されているわけですが,とにかく頭を使います↓
ですが,このようなクイズを試行錯誤しながら解くことによって,自然とパーツ使いのアイディアは育まれることになるわけです。
なお,問題数は以下の通りで,2種類の基本セットを持っていれば実に12問のクイズに挑戦できます↓
使用するセット名 | クイズ数 |
JUNIOR | 4問 |
STANDARD16 | 4問 |
STANDARD32 | 4問 |
STANDARD50 | 4問 |
先述したように,STANDARD50は16や32のパーツをすべて含んでいるので,50が1つあれば12問のクイズに挑戦可能です。
CUBORO THE BOOKは変わった楽しみ方もできる
本書に記載されていた「腕比べ」では同じセットが2種類必要とされていましたが,同じ1つのキュボロをかわりばんこに使って一定時間内で作品を作るようにすれば,家族間でも対戦できるでしょう。
ただし,採点方法がやや煩雑だったので大人が一緒に遊ぶか,ローカルルールを導入するなどして対応してください。
CUBOROの扱いに慣れてきた子どもは,本書の作例を指さしながら
このパーツを使ってみたい!
と言い出すかもしれません。
このとき,Extra Setの紹介まで丁寧に掲載している本書の価値が発揮されたとみるべきでしょう。
そもそも,折角CUBOROという名品に出会ったわけですから,子どもはとことんそれを楽しむべきで,この知育玩具の場合,新しいセットを欲することは知的好奇心の欲求が高まったことに他ならないわけですから,変に出し惜しみするのも変な話です。
もちろん,あるもので何とかしようとするのも大切な態度の1つですが,実際,先に紹介した記事で述べたように,藤井聡太さんの家では同じスタンダードのセットを2つ購入するという,通常は思いつかない選択をしていました。
CUBORO THE BOOKをパターンバインダーと比較
CUBORO関連の書籍としてパターンバインダーも知られています↓
同じ書籍という形態をしていて,cuboroの根本的なポリシーは昔から変わっていないでしょうから,互換性のあるものだと思っていましたが,内容は大きく異なります。
パターンバインダーは実際の達人の作品が多く収録され,名作だけでも25種類,思考力を要する問題を24問解くことができました。
前者においてはすべてに作品名が付けられていたことからも,作り手の思いが感じられます。
しかし,今回紹介したCUBORO THE BOOKでは総合的な数は多かったものの,基本セットの最上位版だけで比較してみれば,その半分くらいしかカバーできませんでしたし,コンテスト優勝者による名作の数は少なかったように思いました。
その原因の1つに,かつての達人が活躍していた頃と今とで基本セットのパーツ構成が異なっていることが挙げられます。
数にするとわずかですが,「パーツを使い切る」ということを美学としていた達人は少なくなかったようで,多くの作品はそのようになっていたわけです。
年数にして旧モデルが売られていた期間は約12年間であるのに対し,現行のものが発売開始となってから本書が発売されるまでに3年くらいしか経っていません。
なので,もしかすると現行のキュボロで名作を収録したものが今後発売される可能性も無きにしも非ずです。
とはいえ,CUBORO THE BOOKの方はレイアウトが秀逸で,長期保管に適しています(パターンバインダーは長く保管していると紙がよれてきます)し,カラー仕様で見ていて楽しい1冊に仕上がっていました。
まとめ
以上,CUBORO THE BOOKのレビューでした。
CUBOROの歴史や遊び方のヒントが書かれていますし,カタログ的に用いることができることから,実際にCUBOROを買おうと思っている人が,本体を手に入れる前に購入するのも良い方法かもしれません。
ちなみに,今回紹介した作例やクイズから判断するに,1つだけ買うのであればSTANDARD50が一番良い選択となります↓
というのも,作例は15個,クイズは12問を解くことが可能になるからです。
ちなみに旧タイプのキュボロスタンダード(2009~2020年に発売されていた54個のキューブが入ったもの)でも新タイプの上記作例をすべて作ることができました(何も穴の開いていないパーツだけが多いものとなっています)。
実際,CUBORO THE BOOKはすでに何かしらのセットを購入した人が買うことの方が多くなるとは思いますが,作例を眺めていると新しいセットを買いたくなる気持ちになってくるはずです。
そして,CUBORO THE BOOKを購入した方というのは,基本セットを1つ購入するだけでは満足しない方がほとんどだとも思いますので,本書を読むことで納得して他セットを買い求めることができるようになるでしょう。
本書の購入を迷っている人は,メインコンテンツである作例紹介のところで,自分が想像していた学びが得られるかどうかで判断してみてください。
本書を買うお金をExtra setの購入代に充てることも十分に考えられます。
とはいえ,本書は全体的に写真は綺麗で作例は見やすく,内容も詳しく書かれていたのでカタログとしても楽しめるでしょうし,著者にはCUBOROの開発者と現社長が含まれるとあって,これ以上の内容のものはそう簡単には作れないでしょう。
一方,すでに廃刊となっているパターンバインダーでは一般人のオタクの手によるキュボロの大作が数多く確認できたわけで,本書がその完全上位互換とはいきませんが,1冊にまとめられていることによる使いやすさやレイアウトの点ではCUBORO THE BOOKの方が明らかに優れています。
総合的に考えると,私的には最近のキュボロを持っている多くの方におすすめです↓
最後までお読みいただきありがとうございました。